早稲田大学のサイトが2014/11/5にリニューアルされたのですが、それについていろいろと議論が巻きおこっているようです。
まずは事実を整理
- 同大学曰く
「国内大学のWebサイトの主流であった“文字中心”の情報伝達から、写真や動画、ピクトグラムなど、視覚に訴える要素を効果的に配した構成に一新」
(プレスリリースから)した - リニューアルしたのは主に一般・父母向けのサイト。受験生や在学生向けのサイトは別に存在し、そこへは外部リンクの形で飛ばす形としている。
- 推奨ブラウザを Windows(8,7,Vista)の場合、IE10以上、Mozilla Firefox最新バージョン、Google Chrome最新バージョン、Mac(OSX 10.6以上)の場合、Safari 5.0以上 と比較的新しいブラウザに絞っている(このサイトについてより)
- 対象以外のブラウザで閲覧すると、非対応だというダイアログが出てくる。✕を押してそのまま読んでいくことは可能。
- 参考:日本におけるここ1年(2013年10月〜2014年10月)のIE8+9のアクセス比率は 8.48% (出典:StatCounter。IE6,7はおそらくその他にまとめられていてわからない)
他の人はどんな風に意見しているか?
- 肯定的な立場
- 早稲田大学のサイトリニューアルはなぜスゴイのか? - It's Real Intelligence! 7
- "スゴイ理由"➝
「メディアサイト」として尖らせたから, 今ふうのデザインと実装を徹底したから, プレスリリースでちゃんと発信したから
- 否定的な立場
- 早稲田大学のサイトリニューアルがなぜこんなにひどいのか。 - 隣り合わせの灰と青春
- "ひどい理由"➝アクセシビリティ上問題である、細かな機能性は必要なのか、大学としての魅力がサイトから感じられないなど
自分のポジション
まず、ポジションを書いておきますね。
- Web制作会社でユーザ視点からユーザビリティを改善するお仕事をしている
- Webアクセシビリティの確保が今、およびこれからのWebに必要だと考えている。理由は以下。
- ちなみにこの記事は個人の見解であって、会社としての意見を代表するものではないですよ。
自分の意見
で、自分の意見ですが、私は今回のサイトリニューアルに違和感があって、それは非対応ブラウザを作ることで閲覧環境=アクセシビリティが損なわれるわけですが、それに対する早稲田大学としての立場が(なにかしらあると思うのですが)わからないためです。ですのでその理由を知りたいと思っています。
非対応だから見られませんという印象
この話題はいろいろな観点から語れちゃうと思うのですが、今回はアクセシビリティに限って話をしたいなと思います(ユーザビリティとかの話はしません)
まず、先の事実整理で書いたように、IE6-9のような「非対応ブラウザ」でサイトにアクセスすると、下記のようなダイアログが出てきます
ご利用の端末もしくはブラウザは、早稲田大学オフィシャルサイト(http://www.waseda.jp/top)では非対応となっております。お使いのブラウザを最新版にしてご覧ください。
✕ボタンを押すことで確かに見ることは出来るのですが、「非対応だから見られませんよ」と言っているような印象を受けました。そして果たして、非対応にする(ノンアクセシブルに見せる)意味ってなんなのだろう?と思いました。
非推奨 ≠ 非対応
ここでちょっと概念を明確にしておきたいのですが、「非対応(cannot view)」と「非推奨(not recommend to view / not guarantee)」は異なると思っています。「非対応」は情報を伝えられませんという意味合いですが、「非推奨」は情報をうまく伝えられない可能性がありますが、求めれば伝えますよと意味合いだと解釈しています。
それで、今回は非対応と言っているのですが、そのように大学側が定めたブラウザ以外を非対応にする(あるいはそう見えるようにする)、つまり情報伝達を諦める必要性があったのだろうかと思いました。
大学は、いまや20代の若者だけでなく、生涯学習支援も含め、様々な人を対象にしていると思います。その中で非対応というのは、それを諦めるだけの指針やメリット・デメリットを天秤にかけた上でそうしたのだと思うのですが、その方針(リニューアル方針というより閲覧環境を絞った理由)が明確では無いため、よくわかりませんでした。
なお、上記だけ読むと、「大学ならIE6-9をサポートしないとダメだよね」と言っているように聞こえるかもしれませんが、そうではないです(僕もWeb制作者の端くれですから、古い環境をサポートするコスト感はわかりますし)。ただ、非対応ではなく非推奨でよかったのではないかと思います(このサイトについてで推奨環境と書いてあるので、本当は上記のダイアログも非推奨と言いたかったのかもしれませんが)。
非推奨ブラウザに対する対応の一例
例えば、キヤノンのWebサイトにIE6でアクセスすると、いったん古いブラウザに対する説明ページにリダイレクトされ、非推奨である理由、新しいブラウザー環境で見てほしい理由を記載しています。
その上で、見たいのであればボタンを押してページを表示できることも明示されています。非対応ではなく非推奨とした上で、その立場を明確にしている一つの例ですが、情報伝達ポリシーの伝え方としては良い例だと思いました(その場合、いろんなサイトがこれを行った場合の、一利用者としてのユーザビリティはどうなんだという別の論点もありますが・・)
引用元:旧バージョンのブラウザーをご利用のお客さまへ - キヤノン
キヤノンウェブサイトをご利用いただきありがとうございます。
キヤノンウェブサイトでは、一部旧バージョンのブラウザーをお使いの場合、表示が崩れたり、動作が安定しなかったりする場合があります。(その結果、情報が欠落する場合もあります)
旧バージョンのブラウザーは、Gumblar(ガンブラー)ウイルスの被害対象となりやすいことや、ブラウザーの世界的標準仕様※に準拠していないことから新しい技術を採り入れられません。
サイトの制作にあたっては、お使いのブラウザーやプラグインソフトウエアによらず、同じ情報をご提供できるように配慮していますが、より安全に、最適な状態でご利用いただくために、できるかぎり新しいブラウザー環境にて閲覧・ご確認いただきますようお願いします。
ですので、どういう必要性に基づいてこうした判断になったのか、その考えを知りたいなと思いました。
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