Webアクセシビリティの記事でブログをつなげる Web Accessibility Advent Calendar 2014 14日目の記事です。自分が大事だと考えているアクセシビリティの要素が世間的に話されるアクセシビリティの話ではあんまり話されていないような気がしていて、ちょっとその辺の話を改めてしてみたいと思います。
内容がよくても伝わらない
人にものを伝える時って大きく2つの要素があって「話の内容」と「伝え方」があります。内容が良くても、伝え方が悪ければ伝わるものも伝わらなかったり、逆に伝わっても話がつまんなかったりします。この2つが満たされて有用なコミュニケーションができるってわけです(なんか就活セミナーみたいですね)
Webもまあこれと同じで、伝える内容と伝え方があります。僕はそれぞれ「コンテンツ」と「デリバリー」と呼んでいますが。
この「デリバリー」がいわゆるWebアクセシビリティにあたる部分ですね。ただ、人にものを伝える時と違うのは、機械にもコンテンツを伝えるということで、内容が良くても、マークアップが適切にされていなければ十分に内容を活かす形で伝わらないことがあるわけです(例えば見出しが見出しとして解釈されなかったり、評価を示す★★☆が単純に2/3ではなく文字列の★2つとして伝わってしまったり)。ゆえにWebでものを伝える上ではWebアクセシビリティを確保することが大事ですよね、というわけです。
このことは、具体的には過去に飲食店情報の活用というテーマで書きました。
簡単に要約しておきますとこういう話です。
最近はNaverまとめやブログなんかで「東京で美味しい○○ベスト10」みたいな情報がそれこそ毎日のように目にするわけですが、こういう情報がイイ!と思ったとしても、果たして何割の情報を実際役立てられているのか?もしかして通り過ぎちゃってることもあるんじゃない?と。だから、きちんと機械にも内容を把握しやすい形で公開して、Googleなんかが収集しやすい形にしておきましょうと。
アクセシブルであれば活用されるのか?
ではアクセシブルな状態で情報を公開しておけば、ユーザが情報にきちんとたどり着けるかというと、まだ足りないんじゃない?と思っています。
これに関しては地域観光情報の活用というテーマで少し書いています。
これも要約しておきましょう。
簡単に言うと、今や地方の役場ごとに観光情報や施設情報を出しているわけですが、これらを実際にフルに活用された方ってどれくらいいるんだろうね?という疑問から始まった話です。るるぶなどの観光ガイドのほうが知りたいポイントがきちんとまとまっていて、役場だと出しづらい情報もきちんとあって、便利だよねと。
だとすると各自治体がそれぞれ完璧にアクセシブルなスペシャルサイトを設けることって果たして理想なの?ということです。施設情報をGoogleプレイス(Google検索やマップで使われるスポット情報の登録サービス)にガシガシ登録して、スマホのGoogleマップアプリからアクセスできるようにしたほうが効果的かもしれませんし、もしくは自治体連合か国みたいな単位で、使いやすい観光アプリを作る、各自治体はデータを提供するだけ、みたいな形のほうが投資対効果が格段に見込めるかもしれません。
ここでちょっと整理
つまり、単にアクセスできるだけでは活用されないのではないか、自分が持っているメディアに拘らず、どういう提供方法をすれば一番伝わるのか考えませんか、という話ですね。冒頭の「デリバリー」を絡めて言うなら、「使いやすい情報の届け方」「役に立つ情報の届け方」「価値がある情報の届け方」を考えようと。
そういうことを考えると、アクセシビリティの達成度合いもいくつかに分かれるんじゃないかと思いました。具体的にはこういう感じです。
Webアクセシビリティの達成レベル
- Lv1: 人間が読める(Human Reachable)
- Lv2: 機械が内容に即して適切に処理できる(Machine Readable)
- Lv3: 生活の中で活用される(Reachable as a service)
Lv1: 人間が読める
文字通り。ほとんどの内容はWebに置いた時点でここにはなると思います。極端な話、要素を全部div要素で囲って絶対配置していてもここは達成できる。情報としてひとまず目には見えるというところ。
Lv2: 機械が内容に即して適切に処理できる
上記でも書いた、Web標準仕様に沿って見出しをきちんと見出しとしてマークアップしたり、レビューをきちんとマークアップしていればこの段階。機械が内容を適切に処理できるというところで、例えばGoogleさんが「お、これは○◯という映画のレビューだね。★3/5で内容はこう書いてある」と理解できるレベルです。
このLv1/2はコードレベルの話で、ある程度機械的・客観的に判断することが出来るレベルです。このあたりの話ではWebアクセシビリティ界隈ではよく話されますね。
Lv3: 生活の中で活用される
情報を利用者がきちんと利用できたというレベルです。地域情報の活用でいえば、施設情報を旅行に行く際のプラン選定に役立てたとか、訪問時に参照したみたいなところですね。
このLv3は、コードよりもっとマクロなUXの計画レベルの話です、あるいはコンテンツストラテジーといいますか。ある程度はユーザインタビューみたいな形でも状況把握できると思います。
情報をWebにアップするからにはきちんと役立ててもらいたいわけで、基本的にはこのLv3を目指していきたいところですね。
活用する場をつくろう
ウェブ全体では、Lv2が満たされれば自動的にLv3も満たされるという状況、つまり生活に活用する各シーンごとにサービスが存在していて、ユーザは自由に情報を活用できる状態が理想的ですが、現実的にはなかなかそうも行かないことも多いです。
例えばこのブログについて、時間がなくて読めないけど、通勤時は(満員で手が使えないけど)ポッドキャストみたいに聞ければなあ、というのは、少し前までできませんでした(梅本さんのiPhone用記事読み上げアプリLisgoが出て、可能になりましたが)。
情報をきちんとアクセシブルにしていても、ユーザの利用するシーンにフィットするサービスがないので、活用されない。Lv2どまり、ということも十分ありえます。もちろんそれでも今のWebの段階からすれば相対的に高いのかもしれませんが・・。
しかし、そういう時にGoogleさんや他のサービスプロバイダーが頑張って活用してくれるのを待とうというのでいいのかな、という思いも一方にあります。いくら大切だと言っても、具体的なメリットとしてわからない限りは伝わるのは一部に限られるでしょうし。
ノンアクセシブルな領域を耕して整理した例としては図書館検索のカーリルなどがあります。自分も来年はそういうことをやっていきたいなと思っています(Webアクセシビリティだけでなく、オープンデータやクリエイティブ・コモンズみたいな情報流通の流れを促進する動きも進むといいですね)
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