カスタマージャーニーマップをUXデザインの成果物みたいに捉えると「皆で集まって話し合って作ってみました」「おしまい」といった静的なものになってしまいやすい、でもそういう一過性のものではなくて、むしろ運用して継続的に更新されていく動的なものですよね?という話です。
しかしそうは言ってみたものの、自分は受託ビジネスの中にいて、サービス事業者のビジネスとはまだ少し距離感があり、実際は動的なものとしては使えてないという実情があります。なので、実践的な立場ではなく、理念的なところから話している点、ご了承ください。
買い物していた時の出来事
いきなり話が飛ぶようなんですが、具体例を出して話させてください。
この前、無印良品のお店で買い物してたんですね。ただ、日曜の閉店2時間前ってこともあって、人が多くて、レジ前に50-60人くらいは人が並んでるんです。ちょっと買い物しようかなあと思って寄ったとしたら、まあ確実にうんざりするくらいの長さです。
ただ、買わないで買えるのも癪なので諦めて並んでると、スタッフの方が最後尾から一人ずつお菓子配ってるんですね。
「こういうのはコスト的には大したこと無いんだろうけどお客さん的にはその気持ちが嬉しいよなあ」とか思ってお菓子をもらったんですが、よく見ると、レジのあたりとか、スタッフ出入り口とか、スタッフが歩く導線中にお菓子を入れた器がバラバラと置いてあったんですね。
業界的にこういうのが普通なのかかどうかはわからないんですが、僕はこれは結構すごいなと。
というのも、UXデザインのことを話す時に、業界の人(コンセント社の長谷川さんとか千葉工大の安藤先生とか)はよく「いいUXを実現するための組織デザインやオペレーションデザインを考えよう」みたいな話をするんですが、この事例はまさにそれかなあと。そういうのがちゃんと出来てるんだと、そういう意味で関心したんですね。
UXデザインを「おもてなし」と表現することがありますが、それは間違っていて、「おもてなし」を実現する組織デザインとオペレーションをどう行うかが、UXのデザインです。 「対応が良い」みたいなレベルのことがUXになってしまうと、対応の良い人をフロントにつけておけばよいのか、という議論になってしまう。スタッフをどう教育するのかといった、実現するための方法を考えるのがUXのデザインです。 長谷川敦士氏「単なる利用者のニーズではなく、何に価値を感じるのか本質的に捉えて、そこに向かうことがUXの肝」 - Web担当者Forum
CJMは日々運用されるもの
閑話休題。
CJMで、ユーザ体験の見取り図を作って、俯瞰できるように整理してみること自体は良いのですよ。
ただ、やっぱりワークショップなどで話して出てくることって一部で、ウェブサービスもリアルサービスもそうで、生き物なので運用してみると見えてくることってたぶんいっぱいあるわけです。
上記の無印良品の件も、何回かこういう場面に遭遇したけどお菓子もらったのは今回が初めてでした。「この時間にすごい混むぞ、お客さんもイライラしてるぞ、どうしようか」ってのがハッキリしてきて最近手を打ったのかもしれません(もしかしたら)
その際に、この課題・解決策、あるいはお客さんの気持ち・意識・文脈をどう組織内で共有するかという話になります。マニュアルで整理してもいいかもしれませんが、ユーザの文脈をわかりやすく伝えるとしたらCJMの方が相性がよいでしょう。そして、こういう点を逐次CJMにフィードバックしていってみんなで共有できるところこそ、組織として強いのかなと。そういうことを思いました。
CJMの例:一人暮らしの料理における現状とその改善点
逆にそれができずにホコリを被ってしまったCJMは賞味期限も短く、勿体ないなと思うわけです。
だから運用に合わせて、この局面でこういうことがあったんだよ、というのを書き込んだり、編集していったりするのが本来のCJMのあり方なんだろうなと思います(前述のとおり、まだそこまで行けていないという反省はありますが)。
ちなみにこの記事は、ユーザ体験の話題でブログをつなぐ "UX Tokyo Andvent Calendar" 2日目の記事としてお送りしました(提供感)
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