要約:図書館界では次世代OPACことOPAC 2.0の構想およびその設計が少し話題になっているようです。卒業研究の材料としているものとして、OPAC 2.0の要素になりうるものをざっと挙げてみようと思います
この4月で今通っている大学では4回生*1 になりました。なので卒業論文を書くわけなんですが、「大学図書館におけるOPACを利用者視点からニーズを捉えて、それに基づいてOPACを提案・設計・構築する」というのがそのテーマです(OPACってのは図書館の蔵書目録のこと)。
そのためにMaking OPAC 2.0なんてシリーズネタも書いているんですが、えーと、まず次世代のOPACとは何なのかということをまだ整理できていなかったですので、整理がてら書いておきます。
まず、世の大学図書館系ブログでは期せずして最近このOPACネタが少し言及されていたりして、例えばこんな話。
書籍に限らず情報収集するのには、まずGoogleさんをひきます。理由、そっちのほうが情報が網羅的だから。
それが、学内にあろうが、学外にあろうが、書店にあろうが、ネットに流れてようが、最終的に入手できりゃそれでいいんであって、とりあえずはまず、何がこの世に存在してるかを、端からつつっと並べてみろよ、ここへよ。
と魚屋の客みたいなことを言いたくなってしまうのは、「書誌をひく→所蔵を知る」という流れからしてみれば、当然のことと言えるかもしれないですが、さあじゃあこうなってくると、どんなにがんばったって所詮は単館所蔵データベースでしかない図書館目録さんの、いったいどこに勝ち目があるんだろう、ていう話になってきてしまうわけですよ。
なんてな、ウェブが便利になったからもう大学図書館のOPACって役に立たなくなったよね、みたいな話はよく聞くところで、千葉大の竹内さんやとか)) と言ってます。
かくいう私も引用主の仰っていることが研究動機でして、どうにも利用品質が悪く、利用者の情報探索要求に応えきれていない感のあるOPACを何とかしたいと前から常々思っておりました。
ハイ。で、閑話休題。話を戻して、OPAC 2.0もとい次世代OPACに求められる要素ってなんだって話ですね。少し頭の中を整理してみて書き連ねてみました。図書館情報学徒としては結構な素人ですので間違いもあるかと思いますが、その際はコメントでお知らせいただけると幸いです。
次世代OPACに求められる要素
他の図書館・書店・ウェブサービスとの連携
- 個人的な重要度
- ★★★★★
例えば、竹内さんの論文ではamazonが成功した要因の一つとして、マーケットプレイスなど中古商品も豊富に取りそろえて収録範囲を広げることで、amazonに行けば何かあるという利用者の期待に答えることに成功したからと答えています。
これと同様に、OPACでも利用者がそこで本を求めている以上、たとえ図書館に本が無くてもここにいけば入手できるよと指し示すことがOPACに求められる役割ではないでしょうか。OPACが単なる単館所蔵データベースで閉じている限りにおいては、こうした期待に応えることは出来ません。それ以前に、大学図書館であればその大学を卒業すれば用済みになるようなところではなく、生涯ずっと使える存在として役割を考え直す必要があるかと思います。
よって、他の図書館や書店あるいはオンライン書店などと緊密に連携を取っていくことで、利用者の情報探索要求に誠実に答えることこそ、まずOPACが前提として持っておかなければならないところなのではないかと思います。
より精度の高い検索機能
- 個人的な重要度
- ★★★★☆
検索エンジンの利便性は発展できる余地はまだまだ残されていますが、それでもその精度は年々増してきているように思います。
例えば、検索語の関連語や併用語を提案してきたり、検索語のゆらぎを吸収してくれたりすることによって、ゲンミツに検索していた結果よりも望んでいた結果が得られるようになりました。
OPACの中心機能が「検索」にある以上、検索の精度向上は次世代OPACの本丸といえるのではないでしょうか。
リンクしやすいURL
- 個人的な重要度
- ★★☆☆☆
amazonが発展した理由とされる物のひとつにURLがリンクしやすい恒久リンク形式になっていたことがよく挙げられます。すなわち、amazonのように http://library.com/book/0123456789 のような形でその本の情報(書誌データ・貸し出し情報等)が参照できるようになれば、図書館へのリンクも増え、それにつれOPACの認知度も増え、より利用が増えるかもしれません。
ビジュアルデザインの見直し
- 個人的な重要度
- ★★★☆☆
OPACのページは文字一辺倒で、書影も用いず、一般に地味とされるビジュアルを持ったところも多く見受けられました。
ビジュアルはデザインの中の一要素であって、過度にビジュアルデザインに傾倒すると、ユーザビリティを損なう危険性があるものの、書影などを積極的に利用して理解しやすいページ構成に変えていくことで、利用者の検索行動がスムーズになるでしょう。
また、Talk to Myself – 書架で回りの本を見るで言及されているようなアイデアと併用してみると実用的にもリアル書架のいいところを取り入れられると思います。
ユーザレビューの記載など利用者参加型OPACへ
- 個人的な重要度
- ★★★★★
amazonは単なる書誌情報が持っていない情報、すなわちユーザーレビューを持っていて、この情報の豊富さもamazon成功の要因としてよく語り草になります。
特に学術の世界では、ほとんど誰も見ないような本もあり、そういう本は大抵amazonでもレビューされていません。しかし、大学図書館でそのような「マイナーな本」に需要が多くあるのであれば、ユーザレビューという貴重な第二の書誌情報を蓄積することで、利用者の図書選定の役に立つのではないでしょうか。それは単に書誌情報にレビューを併記するという意味だけではなく、検索順序の並べ替え材料にもなり得るでしょう。
また、ソーシャルタギングも利用者参加型OPACの一条件です。ソーシャルタギングとは利用者が自由に図書のキーワードを設定することが出来るという機能で、国立国会図書館のPORTAでもこのソーシャルタギングの機能を実装しています。
ミシガン州のアナーバー地域図書館は、こうした機能を意識的に取り込んでおり、Social OPACとの呼び名が付いています。
ソーシャルブックマーク機能と出典管理
- 個人的な重要度
- ★★★★☆
感覚としてはamazon上の書籍ページをはてなブックマークにブックマークするのと似たような感じですね。
ただ、単に文献をブックマークするではなく、それを一括で出典形式にして出力できるなど出典管理ソフトライクな機能をOPAC自身が持つようになると良いのではないかと思っています。
書誌情報の様々な形式での出力と積極的な公開
- 個人的な重要度
- ★★★☆☆
書誌情報をXML形式、RSS形式、MARC形式、または種々の文献管理ソフトで使用できる形式などで出力することで、外部のソフトウェアやサービスとの連携がスムーズになり、文献管理のコストが大幅に減ります。
また、これは意味としては書誌情報をAPIなどによって積極的に公開することとほぼ同義ですこれにより、外部ソフトウェア・サーバから書誌情報を利用できるようにすることで、例えば所蔵図書館マップのようなユニークなシステムや横断検索などがしやすくなります。検索結果をRSS形式で出力すれば、ある分野で最近図書館に入った図書を手軽に追うことが出来るようになり、学生や研究者向けのツールとして役立ちそうです。
これは環境整備の話なので、利用者の利便性に直接関わることではないのですが、結構重要な点だろうと思います。農林水産研究情報センターの林さんもその講演の中で重要性を訴えています。
国立国会図書館のPORTAはこうしたAPI公開に積極的で、様々なメタデータがSOAP/RESTなどを経由して取得できるようになっています。OCLC Worldcat, LibraryThing, Google Book Searchなど海外もデータ公開に積極的なところは多く、OPACにもこの流れが広がっていくことに期待したいところです。
図書館貸出記録の活用
- 個人的な重要度
- ★★★☆☆
岡本真さんの論文でも書かれていますが、例えば今までまるで活用されていなかった図書館の貸出記録を利用して図書館サービスを向上しようという物です。例えばamazon.comなどのオンライン書店のように協調フィルタリング手法を用いてレコメンデーションを行い関連した本を薦めたり、検索表示順序に優先度をつけたりといった具合です。
これには大きく2つの批判があります。一つは図書館の自由に関する宣言3条に見られるように、利用者個人のプライバシーを侵害してしまう危険があるのではないかということ。これに対しては個を特定できないような運用体制にする必要があるが、それに縛られすぎては図書館サービスの向上は見込めないのではないかという再反論もあります。
もう一つは、レコメンデーション自体の問題で、その場合利用者は、精度が低く満足のいくような本を薦めてくることが少ない、あるいは押しつけがましく不快であるなどといった印象を持っているようです。これについてはそもそもレコメンデーションが利用者視点から役に立っているのかどうか調べてみる必要がありそうです。
いずれにしろ、貸出記録はこれだけでなく、既に図書購入の際の参考にもなっているよう(桃山学院大学総合研究所紀要 共同研究報告「大学問題の社会学(2)」によります)ですから、図書館サービス向上のために活用が進む可能性も十分あるでしょう。
連想検索の活用
- 個人的な重要度
- ★★★☆☆
上記のレコメンデーションと類似していますが、こちらはデータを言語的に解析し、ある図書に関連した図書を導き出そうというものです。
オープンソースの汎用連想計算エンジンとしてGETAがあり、Webcat Plusなどの書誌目録検索サイトでも利用されています。
また、OPACとしての関連図書の実装例としてはプリマス州立大学ラムソン図書館があります。
ファセット分類を利用した結果の絞り込み
- 個人的な重要度
- ★★★★☆
ファセット(facet)とは、英語では「切り口」と言うことです。ものには様々な切り口がありますよね。例えば、本ならば出版された年だけでも「2000年以降」「1999年-1980年」「1979年-1960年」「1959年以前」と様々な結果があります。他にも出版社でも「岩波書店」「中央公論新社」「筑摩書房」…と挙げればキリがないですが、一応有限分の結果があります。
ファセット分類とはこの切り口によって、ものを分類する方法を言います。ファセット分類における切り口はそれぞれ排他的(重なってはいけない)で、またその切り口を重ねていくことで結果を絞り込んでいくことが出来ます。
それを活かした例で私たちがよく知っている物は、iTunesのスマートプレイリストでしょうか。各楽曲につけられたさまざまな属性(「アルバム名」「アーティスト名」「レート」…)を材料にして、検索・絞り込みを行ってその条件にマッチした曲のプレイリストを自動で作る機能です。
これに限らず、コンピュータ上では多くのファセット分類の活用例が見られます。例えば、賃貸物件検索サイトでは「家賃」や「駅からの距離」など複数の条件=ファセットから家を探せますし、製品比較サイトでも例えばパソコンのCPUのタイプやHDDの容量など様々なファセットで結果を絞り込んでいますよね(そういえば、最近作ったSmartFeedもそうですね)
OPACでも、このような絞り込みを行っていくことによって、欲しい本により早くかつコストをかけずにたどり着けるようになるかもしれません。
- 参考にしたリンク先
FRBRに基づいたOPAC
- 個人的な重要度
- ★★☆☆☆
この節は用語の定義を具体化して用いているため、しばしば正確ではなく誤解される危険性があります。お読みの祭はそれをご承知ください。なお、より詳しい方からのわかりやすいコメントをお待ちしております。
どこも小難しいことしか書いていなかったので、うまく理解できているかは少し自信ないのですが、私立大学図書館協会の講演内容を頼りに、出来るだけかみ砕いて書いておきます。
FRBRとは”Functional Requirements for Bibliographic Records”の略、日本では書誌レコードの機能要件と訳されています。
どういうことかと言うと、まず利用者は書誌レコードを見て、図書を発見し、他の似たような本と区別して識別し、入手したい本を選択し、そして入手できるかどうかなどを判断しますよね。その過程で利用者がそのプロセスをスムーズに行うためにはどのような書誌データを作ればよいのか…そのモデルを示し、指針となるのがFRBRといえます。
では、具体的にこれに従うと何がうれしいのか。まず、上記の行程(発見・識別・選択・入手)によって、それぞれ著作に付いている情報(属性)で重要なものは違ってきます。例えば、発見の段階ではタイトルや著者名、識別の段階においては版、入手の段階ではそれが貸出できるものであるかが重要になります。これを定義しておくことで、その各ステップにおいて属性の優先度をつけるという判断がしやすくなります。
もう一つ例を挙げましょう。例えば、源氏物語といえばあの紫式部の著作を思い浮かべるかと思いますが、オリジナルがそのまま伝わっているわけではなく、今私たちが読める源氏物語はその写本(コピー)が元となっていますす。それに校注が付いていたり、抜粋版になっていたり、また子供向けに優しく書き下されていたり、あるいは英訳されていたりするでしょう。また、出版社も一つではなく様々な所から出ていますし、それぞれに版違いがあります。このように同じ源氏物語でもいろいろ存在するわけです。
これらはそれぞれ同じ源氏物語とはいえませんが、同じ源氏物語というグループに属するものです。ですから、FRBRに基づいて書誌データを作ることでこれらが関連づけられ、もし利用者がこれらのうちの1つを検索して見つけたときに、同じグループにある別の源氏物語を提案することが出来るわけです。
しかし、考えてみればわかりますが源氏物語のような1つの著作が多くの本になっているというのは、現在でも判型の違いなどで分かれていたりはしますが、そう多くはありません。世界中の書誌データを集めて、整理・組織化しているOCLCという機関に収録されている著作3200万をサンプル抽出してみても、独立した著作の内、約78%には1つの著作には1つの本(版違いなども含めて)しか載っていませんでした。
よって、実際利用されるケースで上記のような利便性が向上するシーンは限定的な物なのかもしれません。
- 参考にしたリンク先
その他関連リンク
上記にまとめきれなかったリンク先を(かなり雑な分け方ですが)まとめて書いておきます。
動向レビュー的な資料
- CA1624 – 次世代の図書館サービス?―Library 2.0とは何か / 村上浩介 | カレントアウェアネス・ポータル
- 新しい技術を採用したOPAC、公共図書館でも導入(米国) | カレントアウェアネス・ポータル
- 京都大学図書館機構 – ハーバード日記 : 司書が見たアメリカ : 【5. ALA2007レポート】 by egami
- sushi-kuinee (Su-sanの ライブラリー): Library2.0、OPAC2.0–図書館におけるWeb2.0的な試み
OPAC 2.0に注目したもの
- CiNii – 情報の科学と技術 56(11) 特集「図書館とWeb 2.0」
- E687 – 望ましい大学図書館システムとは?<文献紹介> | カレントアウェアネス・ポータル
- E566 – 21世紀の図書館目録とは? <文献紹介> | カレントアウェアネス・ポータル
- はてなブックマーク – 書架 / opac
- 次世代型OPAC「Scriblio」
- 図書館退屈男: うぇぶ2.0の器量を伏して
- Library in the Web2.0 environment
各種組織の報告文書などへの反応
- NDLの「書誌データの作成・提供の方針(2008)」 | カレントアウェアネス・ポータル
- 国大図協、『今後の図書館システムの方向性について』を発表 | カレントアウェアネス・ポータル
- 蔵書検索(OPAC)はどこに向かうのか-書誌調整連絡会議の報告を受けて
OPAC 2.0とされる大学図書館OPAC
他にあったら、以下のWikiに追記してください。
おまけ
ちなみに私はProject Next-LのようにOPACそのものを作ることは考えていません。それでは、かなり大きなプロジェクトになってしまいますし、まずもって今すぐ利用できるサービスになるまではかなりの時間を要するのではないかというのがその理由です。
データは公開APIやスクレイピングなどから取得することになるので、システム内でのデータの利用は難しいものとなります。その制限の中でどこまでできるかということになりますが、出来る範囲で実装を重ねていきたいと思っています。
- 関東では4年生っていうんですよね[戻る]
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この記事はシリーズものの一篇です。Making OPAC 2.0シリーズのそのほかの記事もよろしければご覧ください
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