Liner Note

情報(ユーザー中心デザイン・ユーザビリティ)と技術(ウェブプログラミング・ウェブサービス)についてのメモ書き

要約:未だに音楽再生媒体としてカセットテープを使っている人は、なぜ使っているのか、なぜmp3プレイヤーでは代替できないのか。iPod touchが最新のデジタル音楽機器として注目される中でそんなことを考えました

音楽メディアの「進化」

カセットテープからMDへ、MDからmp3プレイヤーへ

音楽を再生する媒体と流通形態は、レコード時代を経て、カセットテープ → CD → MD→ mp3プレイヤー(正確にはデジタルオーディオプレイヤーか) or ケータイと「進化」してきましたし、不可逆的な流れであるように思えます。実際、私もその流れに沿って再生機をカセット*1 録音(中学) → MD(高校) → mp3プレイヤーと次々と乗り換えてきました。

カセット→MDという流れをアナログ→デジタルというくくりで見た時に後者のメリットは何かというと、まずお目当ての曲が即時に呼び出せる点がありますね、HDDレコーダーとVHSビデオ録画機との違いに近いところでしょうか。次に音質の劣化が少ないこと*2 、リモコンが付属して持ち運びが簡単になったことでしょうか。

また、MD→mp3プレイヤーという流れで見た時の後者のメリットは、ディスクの入れ替えが不要・機械的に故障しにくい・コストパフォーマンスがよい・音飛びしないという点でしょうか。

なぜカセットテープを使うのか

というわけで、確かに進化してるなーと思うし、いまさらカセットやMDに戻る気持ちもさらさらないのですが、そんな中で母がカセットをいつも使っているのが気になっていました。そして、お昼に流れる日本直販のCMでもテープレコーダーを未だに売っている。これってUSBメモリ全盛の昨今にフロッピーでファイルのやりとりをしているようなもので、なぜなのかなと疑問に思うわけです。

で、時々mp3プレイヤーの便利さを説いてみたりするのですが、特に反応も無く。ソニーのmp3も聴けるICレコーダーが8,000円くらいで売られていたので、ポストテレコとして勧めてプレゼントしてみるのだけど、実際はほとんど使っていない模様。

で、どうして使わないのかちょっと話しながら探ってみると、どうやらその理由は以下の2点にまとめられそうです。

  1. 母の周りの音楽の流通がほぼ全てカセットテープによって行われている
  2. 再生までのステップがわかりづらい

まず、母(60代後半)の周りにはカラオケ仲間がいろいろいらっしゃるのですが、その方との音楽の流通はほぼ全てがカセットテープによって行われていました。カセットテープ→mp3への変換はほぼ不可能ですから、カセットテープの再生媒体であるテープレコーダーが母の世代で幅をきかせるのも納得できます。まさにカセットテープ流通圏があるわけです。

私たちならPCをある程度使えることが前提に出来るので、CDかUSBメモリで音楽を受け渡したりできるでしょうが、母世代はそれよりかはカセットという扱いやすいアナログな媒体で渡すわけです*3

RIAJの実態調査報告書(50・60代の音楽消費実態)

ところで、母やその周辺の人たちはもっぱら演歌をよく聴くようなのですが、RIAJが2004年に出した実態調査を見てもよく聴いている曲は演歌またはクラシックとあって、これはどうも60代の一般的な傾向だといってよさそうです。

そして、その演歌というジャンルについてですが、私たちがよく聴くジャンルの曲ならTSUTAYAなどで安く借りることも出来るのですが、演歌類は棚1つ分あれば結構置いているというレベルでして、たいていイージーリスニングなんかとそろって店舗の隅の方に置かれていたりします。

2007年の音楽媒体別新譜数を見ても、販売される新譜テープのほとんどを演歌が占めている状況で、CDとカセットテープが事実上併売されている様子が想像できます。というわけで、演歌はテープは現在の所、演歌を聴くためのデファクト・スタンダードといえるわけです。

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次は再生するまでのステップについて。

カセットテープの場合、音源はだいたいカラオケ仲間からテープをもらうかCDラジカセからダビングしているようで、そのテープをテレコに入れてというのが一般的なようです。この場合、目の前でCDとカセットが回っているので、目に見えてコピーしている感覚があり、戸惑うことも少ないようです。

一方、ポストテレコとしてICレコーダーを見た場合、まずCDからPCに取り込んだmp3ファイルをICレコーダーに転送するというのは、どうやらかなりオマケ的な位置づけらしく、そもそも取扱説明書には、mp3ファイルの取り込み方が書かれておらず、転送方法しか書かれていません*4

実のところ、ICレコーダーでの再生ステップ自体は WindowsMediaPlayer の自動取り込み機能と自動同期機能を使えば、ほとんど操作せずともICレコーダーに転送することが出来ます。ただ、その方法も設定の深層にあって気づきづらいというのが実状ではないかと思います。

ICレコーダー

また、ハードとしてICレコーダーを見ても、フォルダ分けや再生コントロールを使った細かい設定などとテレコになく、かつあまり必要もないであろう項目も多く、テレコ以降組としては戸惑う点も結構多いようです。

要するに、ICレコーダーはポストテレコという使われ方はほとんど想定されていないということのようです。とはいえ、母は別にICレコーダーを全拒否しているわけではなく、軽くてコンパクト、かつ音質も格段に良い点は気に入っているようです。

音楽プレイヤーとしては一見「進化」しているようでも、団塊の世代以降が使うようなテレコ的なデジタル音楽機器はまだ市場にはないよなぁというのが雑感です。

ちなみに、ICレコーダとテープレコーダを一体化した「ICテレコ」というそれっぽいのもありました。今までモデルチェンジもなく現在も売られていると言うことは、3年間細々と売り上がっているのかと想像します。ただ、通常のテレコの3倍の実売価格で64MBの記憶容量というのはどうかなと思います…

  1. 音楽番組をラジカセで録音していた時期が懐かしい…その録音中に限って親が呼びに来るのはお約束[戻る]
  2. CD→MDのコピー時と「経年劣化」がほぼないという2つの意味で[戻る]
  3. ちなみに、CD→カセットは頻繁にするが、カセット→CDはほとんどしないようです[戻る]
  4. 実際は、そもそもmp3ファイルって何かというレベルだろうと思いますけど[戻る]
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読者のコメント

  1. お名前

    仁良

    投稿日時
    2008年09月11日
    23時ごろ
    Comment No
    #1

    カセットテープを使用する理由は、音質が優れているからです。
    選曲は面倒ですし、経年劣化もありますが、やはり、アナログレコードの音質を損なわずに録音編集できるのは、カセットテープかオープンリールテープくらいでしょうか?
    音源のマスターがデジタルであれば、私もdbxとパソコンでパワーアンプをコントロールして聴いています。デジタル音楽は、加工や曲の整理。音場コントロール性には優れますし、簡単便利ですが、生々しい音場や音像の再現は無理でしょうね?別に懐古趣味や骨董品として楽しむ理由ではありませんよ。あくまでも音の質と雰囲気です。
    年配の方々が、カセットテープを使うのは、CDやデジタルプレイヤーに馴染めないだけでしょう?カセットデッキも、低価格機種では、本領を発揮出来ません。現在は業務用くらいしか、まともな機種も無いのが残念です。テープも良いモノは有りません。
    現在のデジタル録音レベルでは、カセットテープにわざわざ録音する必要を感じません。
    デジタルプレイヤーで楽しめる方々は幸せか不幸か?…
    キミヨシ

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GiGirさんのプロフィール画像  GiGir
テープが廃れない理由
betelgeuseさんのプロフィール画像  betelgeuse
私的複製流通網とでもいえばいいのかな、友人知人間のエコシステムが出来上がっててたまに外から新しい血音楽が入ってくる仕組みは。
エコシステムの数が元音源の売り上げを決めると。
riywoさんのプロフィール画像  riywo
なるほどねぇ.アフォーダンスがあることはやっぱり重要なんだな.

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