要約:Webのアクセシビリティのビジョンをどう考えるか。私は利用者がより多様な形・環境でサイト中の情報にアクセスできるようになるというWebアクセシビリティの原義に沿ったビジョンを考えています。
今月12日のヤスヒサさんのPodcastではWebアクセシビリティをテーマにして、インフォアクシアの植木さんと対談されていました。
Webアクセシビリティとは
まず、Webアクセシビリティとは何かというのを、普段の知識やインフォアクシ内のページ、あるいはこのPodcastを聴いて感じたところをまとめてみますと、まず下図のように新聞・雑誌などの紙媒体のコンテンツは制作者が作ったようにしか見ることは出来ないのだけれど、ウェブ媒体のコンテンツは文字サイズを変えたり、反転させたり、色を変えたりと、利用者が読みやすいように利用方法・形態を変えて利用することが出来ます。また、ウェブは必ずしもPCから見られるわけではありません。紙に印刷してみられることもあれば、携帯電話で見ることもあります。WiiなどTVで利用することもあるし、機械に読み上げさせている人もいるでしょう。
そのように多様なアクセス方法・表示方法が可能になるのがウェブという媒体の特性で、そうしやすいようにコンテンツ制作者側がきちんと作ったり、ブラウザ(広く言えばユーザエージェント)が機能面でサポートしましょうと。そうした多様なアクセスを考えるときのコンセプトがアクセシビリティ(accessiblity)であると、そういう風に理解しました。
Webアクセシビリティの末にあるもの
ただ、Podcastを聴いていて思ったのは、なんとなくビジョンが見えないなと。
アクセシビリティにはWCAG2.0を始め、いろんなガイドラインがあったりするわけですけど、例えばそれに準拠することで…
- 情報がより伝わるようになります
- 高齢者が(適宜文字サイズを変えるなどして)コンテンツが読みやすくなります
- 一般の読者にもより内容が伝わりやすくなります
- 検索エンジンに内容を拾ってもらいやすくなります(SEO)
- デバイスのアクセス性が向上します
- PC以外のブラウザ(携帯電話・スマートフォンやTVゲーム機のブラウザなど)でも読めるようになります
- 弱視者、全盲者の方が(非視覚系UA*1 を用いて)情報を得られるようになります
といったように多様な環境から利用できるようになると言うメリットがあると。しかし、逆に言うとそれだけ?とも思ってしまうわけです。このサイトでは十分ではありませんが、ある程度適切なマークアップに努めているつもりですから、内容もそれなりにアクセシブルになっているでしょうし、携帯電話やiPhoneなどの機器にはその環境に応じた最適化を行い、読みやすい環境で提供しているつもりです。つまり、全てとはとても言えませんが*2 、ある程度の水準まではできていると思っています。つまりWebアクセシビリティはすでに前提となったルールであって、これから何を考えていけばよいのかなと思うわけです。
Web標準が当たり前な世の中になった時の戦略 | Web標準Blog | ミツエーリンクスこの話に近いなと思いました。つまり、Podcastで言われていたようにWebアクセシビリティという言葉が無くな
った時には、どのような部分にエネルギーを向けるようになっているのかということです。
この図で言うと、アクセシビリティはこの第一水準をやっとクリアして、第二水準について議論されているように感じて、まだ第三水準のことが話されていない…ビジョンというか未来が見えないというのはこういうことを言うのかなと感じています。
Webアクセシビリティのビジョン小考
では、具体的にどのようなビジョンがありうるのかということを、UA側がどういう機能を持つとよりアクセシブルになるかということを意識しながら少し考えてみました。
普遍的に利用できるサイトナビゲーションバーの実用化
- 嬉しいこと
- サイトをより簡単に移動できるようになり、個々のサイト構造設計の善し悪しに関わらず目的のコンテンツにたどり着きやすくなる
Netscape7 や Opera7beta 以降では、コンテンツ制作者がlink要素を適切に記述しておけば、それに従って
サイトの主要な場所にリンクが貼られたナビゲーションバーがブラウザ側で利用できるようになります。
現状、対応ブラウザが少ないため、制作者側も積極的にlink要素を配置しようというインセンティブもあまりない状況なのですが、対応ブラウザの広がりによってブログツールの対応など実装例も増えていくのではないかと思います。検索ページが明示されれば、ブラウザ側から直接サイト内検索を行うこともできるようになるでしょう。
また、この発展形としてパンくずリストなどの現在の位置を示すナビゲーションもブラウザ側に組み込んでいけばいいのではないかと考えています。
Podcastでも、文字サイズ変更機能はサイト側ではなくUA側で対応する機能と言っていましたが、それと同じ意味で今あるナビゲーションも、サイト独自で行うよりもブラウザ側で普遍的に扱えるようにすることで、よりサイト内での迷子が減らせるようになるかと思います。
利用者自身がウェブサイトを簡単に再設計できるように
- 嬉しいこと
- サイト構造が明確になることで、情報にアクセスしやすくなる
単に反転するとか、文字サイズを変えるという単純な調整ではなく、例えばサイドバーや本文、フッタなどをモジュール化して、それを利用者が好みのレイアウトで閲覧できるように設定できるというものです。
HTML5(現在は草案段階)ではmenu要素やheader要素/footer要素、nav要素などコンテンツをより明確に構造化するための専用の要素が設けられていますが、これを利用して利用者がどのサイトも同じデザインで閲覧できるようにもできるでしょう。

また、通常の縦スクロールに加えて横スクロール読みや、縦書き読みなどが利用者側で選択できるようになれば、個に応じたウェブの読まれ方が広がるかもしれません。
コンテンツのきめ細かい調整
ただ、そうした大きい意味での調整だけではなく、細かな調整(文字サイズ調整など)にも気を払う必要があると思います。
ところで、このサイトにはレイアウト調整機能を設置していて、文字サイズや行間を変えられるようになっているのですが、その対象範囲は基本的に本文+コメントだけにしています。
それはタイトルやナビゲーションを拡大してしまうと、全体のレイアウトが崩れてしまって、リンクなどにアクセスできなくなることを考慮してのことです。
先のHTML5の話に関連していえば、本文部分がきちんと構造化されていますから、例えば文字サイズを調整する際は本文の文字サイズだけ拡大、全体を拡大(ズーム機能)などが選べるようになるわけです。よって、大きいサイズで見た結果レイアウトが崩れて情報に気づかない・アクセスできなくなるという事態をある程度回避できるようになるではないかと思います。
まとめ
Webデザインというのは制作者の技量によってバラツキが多いところで、Webアクセシビリティもそれに大きく影響されてきたと思います。構造整理が不完全なナビゲーションなど目的の情報にアクセスするまでに頭を抱えてしまうようなサイトもあるでしょう。優れてアクセシブルな所もあれば、そうでないところも多い。
ナビゲーションやレイアウトをユーザエージェント側から普遍的にアクセスできるような環境を整備することで、Webアクセシビリティのバラツキが無くなるでしょうし、何よりもこれによってユーザ自身がウェブの見方をコントロールできるという考え方が定着すれば、ウェブデザインへの考え方も大きく変わるでしょう。
多様な人・機械が多様な環境から多様な見方が出来るようになる。細かな違いはあれど、Webアクセシビリティのビジョンはこの語の定義を徹底したものになるのだろうと思います。
参考にしたサイト
ブックマークコメントへの応答
その前提がまだ低くね?とは思う。その品質はもっと高められるはず。加えて俺らは本当に障害者のニーズを取り入れているのかっていうのもギモン。デベロッパーの虚像とかになってないかな。
前段、突き詰めれば一例として画像の代替テキストをより詳しく記述したり、動画に音声キャプションを付ける必要があるでしょう。しかし、これは、画像置換問題の時にも結論したように、完璧を求めるのではなく、ある程度どこかに一線を設けないといけない話だと思っています(それで飯を食っているわけでもない限りは)。いくらコンテンツがアクセシブルであっても、コンテンツ自身がつまらなければアクセスする価値はありませんよね*3 。
そうではなくて、まだまだ手近な範囲でやってないことがこんなにあるじゃないかということであれば、その旨お知らせいただければ助かります。
後段、確かに障害者がウェブをどのように見ているかというのも総務省の「みんなの公共サイト運用モデル」というコンテンツを見て始めて具体的に知りましたし、直に障碍者の方がウェブを利用していることを観察したことがありません。
そういう意味では仰るとおり、デベロッパーの虚像
を基にデザインしてアクセシブルだと言っている可能性は大いにあります(こんなハッキリしない言い方をしているのがその印ですね)。
- 音声ブラウザ、スクリーンリーダー、点字ピンディスプレイなど[戻る]
- alt属性値なんか時々不十分だなーと思いつつ、面倒くさいので少し手を抜いた記述をしたりしますし。今回の記事でも不十分な所もあるでしょう。[戻る]
- 別に、俺って面白いコンテンツ書いてるよねという意味ではなくて[戻る]
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