Liner Note

情報(ユーザー中心デザイン・ユーザビリティ)と技術(ウェブプログラミング・ウェブサービス)についてのメモ書き

要約:動画サイトがニコニコ動画に対抗するためには控えめなディープコメンティング機能は必須だろうなー、とふと思ったことを長々と書いた

ニコニコはエンターテイメントに強い

日本の動画共有サイト業界では、ニコニコ動画がYouTubeをあっという間に追い抜いてしまった感がありますね。もちろんどういう視点で競争をさせるかによるわけだけど、少なくとも平均訪問回数や平均利用時間で見るとニコニコのそれはYoutubeの上を行っています。

今、大学の講義の休み時間にPCルームでこれを書いているのだけど、両隣の人がニコニコ動画を見ていて、身にしみて説得力を感じます ;)

感覚的にはこのままニコニコが突っ切りそうな感じなのだけど、じゃあ果たしてそうなのか。というと個人的には自信を持って「はい」とは言えない感じがします。以下はニコニコで人気の動画を集めたランキングなのだけど、それらを見てみると動画は主にアニメのパロディやゲーム(改造品含む)のやりこみ動画やパロディ動画がほとんどだと観察できます。

なぜなぜニコニコはエンターテイメントに強いのか

あくまでこれらはニコニコに投稿されている一部の動画なので断言するのもはばかられるとはいえ、ニコニコ動画に投稿される動画の主成分はこういう類のエンターテイメント動画だといえます。

とすると、たとえば教育番組だとかニュースだとか料理のチュートリアルとかエンターテイメント以外の分野では、ニコニコの手法はマッチしていないんではないかという仮説が浮かんでくる。

ちょっと、ここでニコニコ動画についてほかの人の意見も入れてみようかな。批評家の東さんなんかは「擬似同期」型メディアの登場・人文系が語るネット(中)の中で、本来は非同期的であるはずのネット上で、ニコニコ動画のようにあたかも同期的(一緒)にコミュニケーションしているかのように錯覚させることで、ユーザに共通体験感(ライブ感)を感じさせる(文中で言う「身体的共感」の獲得)ことに成功していると指摘してます。

ニコニコ動画のサンプル

加えて、「メタデータ」が主役のコンテンツ消費・人文系が語るネット(下)という記事では、コンテンツそのものよりもメタコンテンツ(ニコニコで言うユーザーコメント)がより消費されることを指摘しています。

さて、たとえば私たちが仲間内でテレビを見るとき、エンターテイメントコンテンツ(アニメ番組やゲーム)と料理コンテンツのどちらが、それを見る仲間の反応により着目しているといえるでしょうか。料理好きが多く集まるところでは後者でしょうけど、一般的には前者なのではないかと。つまり、ことエンターテイメントに関しては、番組そのものもそうですが、それに加え番組を受けての反応を楽しむ、テレビを通じた仲間内のコミュニケーションなんかも楽しんでいるといえるんじゃないでしょうかね。

とすると、この例に東さんの指摘をあてはめてみますと、リアルにおける仲間内のテレビを通じたコミュニケーション(仲間の反応を楽しむ)というメタコンテンツをより消費する傾向というのはエンターテイメント分野でより当てはまるといえるでしょうし、そうしたコミュニケーションには前提として一体感(「身体的共感」)を必要とするわけです。

こうしたことがニコニコ動画がエンターテイメントに強い理由だといえそうなのだけど、逆にそれ以外の分野ではニコニコはあまり適していないといえそうですね1

それ以外では何がある?

では、どんな手法がエンターテイメント以外の分野(より実用面にフォーカスしたコンテンツ、報道とか料理とか)にあっているんでしょうか。これはさっきの議論をひっくり返してみればいいわけです。つまり、教育番組や料理番組などはユーザの反応というメタコンテンツよりも、コンテンツそのものがより着目されるってことです。

私はニコニコ動画を始めて見た時に驚いたのは動画というコンテンツの上にコメントがのっかっていたことですね。これはYouTubeのように従来は「動画が主であり、反応(コメント)は従である」という今までの概念を180度ひっくりかえしたものであって、これはテレビ局の人たちが絶対思いつかない発想2 だろうなと。それが初見の感想で、今もそれがニコニコとYouTubeを分けるもっとも大きな特徴だろうなと思ってます、当たり前くさいですが。

それで、ことエンターテイメントにおいては、この手法は画期的で上に書いたようにエンターテイメント動画のスタンダードになったわけですが、それ以外はどうか。つまり、それ以外においては従来のように「動画が主であり、反応(コメント)は従である」であるという手法がより効果的なのではないかと。

ただ、(これは自分の経験から語るのですけど)一度ニコニコを見てしまうと他の動画共有サイトのコメントがあまり価値がないように思えてくるんですね。つまり、反応が「従」すぎてあんまり見ないようになったということです。反応の価値も動画コンテンツ全体の価値として上乗せされるものとして考えるなら、この反応の価値はエンターテイメント以外の分野においてももはや無視できないものなんじゃないかと(これがいわゆるWeb 2.0ってヤツッスか?)

であるならば、ニコニコのような、でもニコニコほど主張しないディープコメンティング(映像の好きな位置にコメントできる)機能はこれからの動画共有サイトにとって備えておくべき要素ともいえるんじゃないでしょうか。

viddler サンプル画面

具体的に、これを実現するサービスをあげるとなると、viddlerとかがそうだと思います。一応、適当な動画にリンクを張っておきます。コメントは動画に添え物をする感じで出てきて、それがなんか自分の思ってる感じとしっくりきますね。

viddlerを紹介しているサイト
100SHIKI.COM: 映像のある場面にコメントやタグをつけられる『Viddler』
TechCrunch Japanese: Viddler、ビデオ内の”瞬間”を共有・検索可能に

ただ、実際に使ってみて残念だなーと思ったのは、YouTubeに比べてユーザーによるコメントやブログへの埋め込みの敷居が異様に高いことですね。まず、コメントはログインしていないと出来ませんし3 、部ログに埋め込むのも、YouTubeのようにHTMLコードが書かれているわけではなく、XML/RPCかAtomPP経由でブログに投稿するといった具合です。さすがによくわからん動画サイトにアカウント情報を渡す人はいないんじゃないでしょうか…。

あとは、ニコニコ動画の元ネタというかアイデア元的存在のsynvieですかね。新着動画が今年の9月末とかなり過疎っているのですが、コメントの出し方はなかなかよいと思います。各報道局の動画ニュースサイトにしたって、個別的にニュース動画流すのでなく、こうしたところにニュースを統合的に集めて報道センターみたいにするとちょっとはおもしろいのかも。

できるなら、YouTubeもこうしたディープコメンティング機能を取り入れて、他の動画サイトと差別化していってほしいですね4

  1. もし、あったとしてもエンターテイメントの色を帯びざるを得ないでしょう。なぜならそれがウケるから[戻る]
  2. そりゃ、製作者とすれば自分たちのコンテンツを押し出したいでしょうからね。[戻る]
  3. これはYouTubeもニコニコ動画もそうなんですが、ニコニコのそれは動画を見ること自体にログインが必要なので、それさえ乗り越えてしまえばコメントができるので、ユーザとしてはコメントには敷居をそれほど感じないかもしれません[戻る]
  4. そうなるとSPAMが増えて対策がより大変になるかもしれませんが、それはニコニコを見よということで[戻る]

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