要約:Amazonの電子ブックリーダ Kindleを「紙媒体の本と同じような感覚で扱えるかどうか」という点から考えてみました
ニコニコ動画に続いて「スタンダードになるのか」シリーズ‥にするつもりはなかったんだけど、いろんな批評を読んでたら自分も書きたくなったので、メモ書き。

で、今回はAmazonから出た電子ブックリーダ Kindleについて、スペックなどは以下のプレスとかニュースサイトで。
- Amazon.com – News Release: Introducing Amazon Kindle
- Amazon、ワイヤレス機能つき電子書籍リーダー「Kindle」発売 – ITmedia News
- 米Amazon.com、携帯電話内蔵の電子ブックリーダー「Kindle」を発売
- スラッシュドット ジャパン | 米Amazon、電子書籍リーダー「Kindle」発売
で、これを取り上げているBlogはいっぱいあるんですが、知り合いの方のmixi日記ではこういうメタ批評がありました1
スマートフォンやケータイとPCの間に位置するこの手のデバイスは,いつもながら中途半端に思えてならない。(中略)逆に,使い勝手や機能はPCに比べるとかなり劣る。
こんな批判があった。うーん、優劣をつける基準が曖昧ではないだろうか。Kindleは「いつでもどこでも60秒以内に本を買って読める」ようにする事が目的だ。それを軸にしたら、明らかにスマートフォンやケータイやPCよりも使いやすそうではないか。”いつもながら中途半端”な何かというのは恐らくPDAのことだと思うが、あれはあくまで小型PCの枠に留まっており、他の目的を持っていないので、そもそもフィールドが違う。比べようがない。
機械自体の性能を問題にするなら、「いつでもどこでも60秒以内に本を買って読める」という目的を阻む要素を取り上げるべきではないか。例えば「本当に紙と同じぐらいストレス無く文字が読めるのか?」とか「本当に誰でも迷うことなく買えるのか?」とか。
で、このどういう観点で評価するかってことについて、この日記のリンク先のテキストを読みながら考えてたんですが‥リンク先が面白いのでこちらもちょっと引用してみます。
そして個人的に感じている最大のポイントは
フィジカルな紙がデジタルな端末に置き換わっただけで、「提供された文章を読む」という行為そのものに変化はないのではないか
という点です。確かに Kindle は「自宅の本棚+書店 in iPod」のような、これまでにない存在ですが、よく考えたら「本を読む」という行為の部分は一緒ではないでしょうか。
せっかく無料でネットに常時接続できる端末なのですから、「いま同じページを読んでいるユーザーとコンタクトが取れる」「疑問に思う箇所について、すぐに著者に質問できる」「誤植に気付いたらすぐに出版社に報告ができ、修正はリアルタイムで全読者の Kindle にアップデートされる」などといった機能が提供されても良いのではないでしょうか。また読んでいる本に関連する文章を Kindle 上で作成し、すぐに Amazon.com に出品できる機能とか。そう、例えて言うなら Read Only だった WEB1.0 から、Read/Write Web である WEB2.0 への変化のようなイメージです。
アマゾンの電子ブックは「グーテンベルク以来の大発明」か – シロクマ日報 [ITmedia オルタナティブ・ブログ](強調部分は筆者によるもの)
「本を読む」って、単にそれを読むだけじゃなくて、それを通じたコミュニケーションなんかも含んでいて、でもってKindleには通信機能を付けているのだから、後者の機能を付けてみたらいいじゃないかと。つまるところ、(パーソナルな)リーディングデバイスとしてだけでなくてソーシャルデバイスとしての側面も持たせた方がおもしろくねってことですよね。
この意見は確かにそうだなって思います。でも、ソーシャルデバイスとして発展していくためには、まず基本性能としてリーディングデバイスとして完成されていることが前提でしょうね2 。と、こんなことを言ったのは、初見の時にリーディングデバイスとしてのKindleの完成度を考えた場合「まだ考える余地があるかなぁ」となんとなく思っていたからで‥なので、今回はコレをちょっと考えてみたいと思います。
さっきのどういう観点からKindleを考えるのかって話にあてはめると、「紙媒体の本と同じような感覚で扱えるかどうか」という点でしょうか。つまり、KindleのUIの敷居がどれくらいなんだろうかってことですね3 。
それで、それをもっと具体的に考えるために、紙媒体の本の特徴をブレストしてザーッと書き出してみるとこんな感じになりました。
- ハードウェア的観点A
- 適度な軽さ(→最大で200-300ページのA6単行本程度=300g)
- 適度な大きさ(→最大でA5判程度)
- 解像度が高く読みやすい
- 太陽光の下でも普通に読める
- 操作(ページを進めたり戻したりナド)が簡単にできる
- 複数の本を同時に広げて眺めることができる
- ハードウェア的観点B
- 気になった部分にペンで強調できる
- 気になったページに付箋を貼れる
- しおりを挟んでおけば読書を簡単に再開できる
- 考えたことを書き込める
- いつでも内容が変わらない
- いつでも内容を読める
- どこでも内容を読める
- 何度でも内容を読み返せる
- 社会的観点
- 入手が容易(場所)
- 入手が容易(本の点数)
- 本屋で立ち読みして買うかどうか検討できる
- 価格がお手頃
- 友達に貸したりできる
ハードウェア的観点のA/Bは、それを電子ブックに当てはめたとき、ハードウェアとソフトウェアのどちらで実現するかで分けたものです。
で、これらを以下の公式プロモビデオ(が転載されたもの)やレビューしているサイトなんかを見ながら朱を入れてみると、
- TechCrunch Japanese アーカイブ » ベゾスに聞く、KindleのQ&A
- TechCrunch Japanese アーカイブ » Kindle: まずは触ってみた
- Kindleは「電子書籍のiPod」になれるか? – ITmedia News
- ハードウェア的観点A
- 適度な軽さ(→最大で200-300ページのA6単行本程度=300g)
- ○‥g換算で292g、ちょうどいい重さですね。
- 適度な大きさ(→最大でA5判程度)
- ○‥cm換算で19×13.5×1.8(縦x横x厚さ)、これは新書判よりかは大きいけどA5判よりかは小さいサイズ。まぁいいんじゃないすか。
- 解像度が高く読みやすい
- ○‥e-InkはLibrieを試したときも思いましたが非常に読みやすいです
- 太陽光の下でも普通に読める
- ○‥太陽光の下でも読みやすいとのこと
- 操作(ページを進めたり戻したりナド)が簡単にできる
- ○‥進む・戻るは大きなキーが付いているので簡単。だが、紙本のメタファからはちょっと遠いかも。
- 複数の本を同時に広げて眺めることができる
- ×‥今のところはできないみたい。Kindleを複数台用意するかw
- 適度な軽さ(→最大で200-300ページのA6単行本程度=300g)
- ハードウェア的観点B
- 気になった部分にペンで強調できる
- ×‥現状はページの一部を強調する方法はないみたい
- 気になったページに付箋を貼れる
- ○‥クリップを挟めるみたい、紙みたいにゴチャゴチャする必要が無くて良い
- しおりを挟んでおけば読書を簡単に再開できる
- ○‥ブックマーク機能がある模様
- 考えたことを書き込める
- △‥書き込めるけどもQWERTYキーボード経由なので敷居が高い
- いつでも内容が変わらない
- ○‥当たり前
- いつでも内容を読める
- ×(?)‥詳細は不明ですが、boingboingによると、Kindle Storeでは.azwという独自形式の本が売られていてDRMがかかっているとのこと。取扱量拡大に向けて仕方ないとはいえ、これは大きなマイナス。
- どこでも内容を読める
- ×(?)‥同上。
- 何度でも内容を読み返せる
- ×(?)‥同上。
- 気になった部分にペンで強調できる
- 社会的観点
- 入手が容易(場所)
- ◎‥物理的実体としての本屋さんに縛られなくて、いつでも無線通信経由で購入できるのは超便利、さらに入手にPCが不要というのも読者に余計なルールを覚えてもらう必要が無くてGood
- 入手が容易(本の点数)
- △‥9万点という在庫は確かに電子ブックとしてはダントツだけど、紙媒体と比べると見劣りしますね。iPodには普通のCDなら全部入れられるけど、Kindleにはできない。けど、必ずしも売れる本だけでなく絶版になりそうなあまり売れない本もバンバン売り出せるという意味ではすごいかもと思ったけど、上記の9万点の9割は「ベスト・セラー」だそうです。
- 本屋で立ち読みして買うかどうか検討できる
- △‥Amazon Inside(なか見!検索)が使えるかどうかは不明ですがちゃんとそこは使ってくるでしょう。ただ、全体を概観することができないのでちょっと不便かも。
- 価格がお手頃
- ○‥ほとんどが$9.99(約1100円)という価格設定(citation: WSJ)をどう見るかですが、個人的には書籍版が1700円くらいだったら電子版でもいいかなって感じのラインですね。
- 友達に貸したりできる
- ×‥TechCrunchによると貸し借りは禁止されているそうな。アナログなコミュニケーションは著作権の関係で実現は難しいのかもしれません。
- 入手が容易(場所)
ということで、ハードウェアとしてはいい線行っていて、ソフトウェアも頑張ってはいるけどもまだ工夫できるところがあるかなと言う感じでしょうか。
デジタルな媒体にアナログな感覚を取り入れることの重要性は直感的なユーザインターフェイスって何?という記事でも書きましたが、やっぱりこうした点をもうちょっと積極的に取り込んでいって欲しいですね。
例えばiPhone / iPod touchなんかは、こういう風に指を滑らせて操作する(Apple曰くフリック)インターフェイスがありますが、まさしくこのUIは紙本と同じようにページをめくっていく感覚で、Kindleみたいなデバイスにこそ必要じゃないかなと思うわけです(ペンのマーキングなどもしかり)ただ、touchableなe-Inkは噂を聞いたことすらないので、現状はまだ技術の限界でしょうか。
文字入力に関するマンマシンインターフェイスはキーボードが現れて以来、四半世紀ほとんど進化してこなかったところで、私も常々なにかいい案がないか考えるんですが、しばらくは敷居はQWERTYキーボード以下には下がらないんだろうなと。仮に文字認識技術が飛躍的に進歩したとして、Kindleの画面をいっぱいに使って、文字認識ウィンドウを出してそこに文字を書いてもらうとかが精一杯でしょうか。
で、いろいろ書きましたが全体としては結構頑張っているなぁというのが印象です。もうちょい電子ブックの価格が下がれば結構広まっていくんじゃないでしょうか(現状の価格だとちょっと厳しい感じがします)。といっても、価格やDRMは出版社次第ですから、技術的な壁よりも法的・社会的な壁の方が断然高いんでしょう。
ただ、これらを解決するためには出版社が電子ブックが大きな市場だと注目すればいいわけで、そのためにはKindleユーザ人口を増やせばいいわけです。そのためにはKindleのデバイスとしての魅力を高めればいいわけで、結局は技術的な点に帰着しそうです。そういう意味では今後の技術的進化に注目したいですが、同時にもうちょっとリーダ自身を戦略的な値段と思えるくらいにまで下げて欲しいですね(できればWii程度)
- 「全体に公開」していたので引用させていただきました、問題があるならお知らせ下さい。しかし、ブログでmixi日記を引用するようになるとつくづくmixiもインターネット的になったものだと思います[戻る]
- アキヒトさんのアイデアを批判しているわけではなくて、どちらもないとダメだろうなぁという話です[戻る]
- つうことで、今回はヴィジュアルデザイン云々は扱いません[戻る]
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